東京に戻ってきてから数日がたち、こちらのペースに慣れてきた。
そろそろ運動しなきゃな、と思い、半年前から休会していた上野のスポーツクラブに復帰の手続きをしに、徒歩で上野まで移動する。
受付でスポーツクラブのお姉さんが、
「月の途中から復帰の手続きは出来ないの」
との事で、5月から復帰することで手配してもらう。
運動しようと思っていたのに、思いがけず時間を持て余してしまったので、上野公園を散歩。
スポーツクラブの帰りによく寄る、都立美術館の中にある喫茶店でボンヤリ・・・
喫茶店の名前が
Cafe Art
という、つまらない名前に変わっていた。
喫茶店では、大量のオバサマ方がピーチクパーチクと世間話に花を咲かせている。一人一人の音量はそれほど大きくないのだが、50人ほどのオバサマ方が一斉に自分の事を必死に話しているので、雑音に交響曲のような不思議なハーモニーみたいな独特の奥行を感じる。
さっきから、変わる前の喫茶店の名前を思い出そうとしているのだが、どうしても思い出せない。
確か漢字一文字だった。
門
とか、
角
とか、そんな名前。
私の前に座った60代のオバサマふたり連れがカレーを食べながら、ヒソヒソとグチを言い合っている。メガネの奥にある瞳が輝いてみえてしまうのは、気のせいだろうか。
窓の外に目を向けると、木立が風に吹かれて大きく揺れている。
木立の向こう側に、低い雲が早く動いているのが見える。
これから雨が降るのかもしれないな、と、ふと思った・・・